大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)416号 判決

被告人 右山昌一郎 外一名

〔抄 録〕

A・B両弁護人の各控訴趣意第一点及び第二点について。

所論により本件記録を調査し並びに当審における事実の取調の結果に徴し、被告人両名の司法警察員並びに検察官に対する各供述中の自白の任意性につき検討するに、原審並びに当審公判廷における被告人等の各供述、被告人等提出の各上申書、当審において取り寄せた、被疑者草間四郎に対する刑事訴訟法第二百六十二条の請求事件記録(東京地方裁判所昭和二九年(つ)第三号事件)中の右山昌一郎、小野千束の検察官に対する各供述調書、右裁判所のなした右両名に対する証人尋問調書、決定書を総合すれば、本件の取調に当つた司法警察員草間四郎は被告人等を取り調べるに当り被告人等の自白を求めるため被告人等に対し、鉄筆の頭部で額等をついたり、平手で頬を殴打する等の暴行を加えたことが認められ、また検察官が坂本警察署において右山昌一郎を取り調べた際には右草間四郎がその場に在席して自白を促し、東京地方検察庁において検察官が被告人等を取り調べた際には手錠をかけた儘取り調べたこともあることが認められるので、右取調の経過、本件被疑事実の性質内容、被告人等の年齢、経歴、地位等を総合考察するときは、被告人等の司法警察員並びに検察官に対する自白はいずれも任意性に疑があるものと認めるのが相当である。

しかして被告人右山は公判において、判示第一の(七)の金員は被告人の病気見舞として貰つたもの、その他は被告人がすぐ返す考えで一時借り受けたもので職務に関係なく授受されたものであるといい、被告人小野は判示事実はいずれも職務に関係なく確実に返すつもりで一時借用したもので、判示第二の(一)は故郷の老母に送るためその購入を依頼し一時代金を立てかえて貰つたもの、第二の(二)は当時自己の学資の必要に迫られ一時融通を受けたものである旨弁解するので、本件記録並びに当審における事実の取調の結果に徴し、当時の被告人等の生活環境、生活態度、金員授受の状況その使途、事後における返金の状況等を総合考察すると、右主張は必ずしも一概に単なる弁解に過ぎないとして排斥すべきものとは解せられない。尤も被告人等が判示のような職責を有する位置にありながら、判示各関係人より病気見舞名義の金員を受け、或は一時所要金員の融通を受けるようなことは公務員として最も慎しむべきところであり、一方各関係人の検察官に対する右各金員を贈賄の意味を含めて被告人等に供与した旨の供述も一応首肯しうるものであるが、被告人等の前記各自白調書を除外するときは、本件記録並びに当審における事実の取調の結果によるも、被告人等がそれぞれ判示のような趣旨で供与される情を知りながら判示各金員の供与を受けたとの点は遂にその証明がないものと認めざるを得ない。この意味において原判決は証拠能力のない証拠を採証の用に供し延いて事実を誤認した違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるので、論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。

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